‘写る人’と‘写す人’を超えた所に何がある?


各社から、一眼レフタイプのデジカメが徐々に一般市民にも手が届く金額で供給されだした。
もちろんキヤノンからも数百万していたものが一桁取れた値段になった。一足先に出たニコンD1
なんかは評判がいいようだ。

お節介な人たちは、私がキヤノンの一眼デジカメを買うのではないかと期待しているようだが、そ
うはいかないぜ。
そもそも、写真はフィルムに焼き付けて楽しむものだと考えている私は、そんなものには興味が無
い。では何故キャメディアのC−2020ZOOMを買ったりなんかしたのだと、言われそうだが
まったく使い道が違うということだ。

まなちゃんと買い物に行ったり、部屋でのスナップを撮るのと、作品撮りでは根本的にスタンスが
違うのである。
元来、一眼レフのデジカメはオリンピックなど速報性が必要な写真に関して、報道で必要なのだと
認識しているのだ。例えばある種目の競技が終わった、いや、お目当ての選手の出番が終わった瞬
間に即、電話回線で出版社なり新聞社に送ってメディアで発表するスピード競争に負けないための
兵器なのだ。
それで、閉会式が終わった時には写真集も同時に編集が終わり、オリンピック速報グラビア誌を世
間の興奮が静まる前に出してしまおうという魂胆である。

そんな撮影は私には無縁のものだし、撮った時にはブラックボックスの中で、後に現像からあがる
まで、仕上がり具合にドキドキハラハラしながら待つのもいいものだ。
そして、フィルムの種類の使い分けなどの楽しみも捨てきれない。
絵画と同じ静止画でありながら、違いがるとするとボケが表現できることと、このその場で結果が
見えないところが、写真の醍醐味だと思っている。

なーんて具合に私の考えをはっきりさせたところで、そろそろ私にも活動の時期が来たようだ。
来週末には広島に行くことになったが、『素顔のままで』2000年版の開始ということで、私流
を突き詰めて行くことになる。

とにかく、誰を撮るにしても、目の前のモデルが一番魅力的に見える瞬間を切り取ることに変わり
は無い。そのためには‘写る人’と‘写す人’という関係だけでは、絶対に上手くいかないのだ。
そこが風景写真やブツ撮りとは大きく違うところであり、面白いところなのである。
風景写真は自然の織り成す光景をじっと待つ忍耐と諦めない執念が必要だが、しかしポートレート
は待っていては、いけないと思うのである。

まなちゃんはいつもいい表情を見せてくれるが、待っているだけでは撮影会に彼女をを呼んで撮っ
ているのと大差ない。
だが個人撮影ともなれば、そうはいかないのだ。一対一で向かい合って私がじっとしてても、まな
ちゃんもいい表情をしてくれるわけではない。案外まったく見ず知らずのカメラマンの方がそれが
やりやすいかもしれない。
今のように、仲良くなってしまうと逆に照れてしまうようだから、こちらから働きかけなければ、
上手く行かないのだ。だから、常にコミュニケーションを取っているということで、それを途切れ
されることは無い。

実際、シャッターを切り出すと私もまなちゃんも、喋ることは無いが、それはお互いが勝手にやっ
てると言うことではない。
勘違いしている人も多いようだが、話をしながら撮れば良いと思っていたら大間違いである。
話しながらってのは、そんな状況を撮る時だけで、言葉で返事を求めるような会話はタブーである。
しかし、私が無言で撮っていると思わないで欲しい。会話をしないだけで、何か色々声は掛けてい
るし、少しでも気分良くまなちゃんが入っていけるようにしている。いいポーズが出たら、ちょっ
と止めることもあれば、もっとこうして欲しいということもある。
だが、一番重要視している表情に関しては、まなちゃんの表情の変化に合わせてシャッターを切っ
ているが、見ていてカメラのファインダー越しに見るのが惜しいぐらいに、いい感じになってくる
ことも多くて、フィルムに焼き付けて永久保存版にするために、シャッターを切る指にも力が入っ
てくる。
そんな私の状態は、確実にまなちゃんに伝わっているから、更にいい表情になってくるのだ。

そんな撮影ができて、フィルム一本まわしてしまうと次のフィルムに入れ替える前に、何らかの形
で、それを表現したくなってしまうのだ。それは言葉であったり、スキンシップであることもある。
それで、新しいフィルムを入れるのを思わず忘れそうになってしまったことが何度あったことか。
そんな冷静さを保っていなければいけないカメラマンであるが、モデルと一緒にいい気持ちになる
ためには、カメラの操作ぐらいは、目をつぶっていてもできるようになっておかなくてはいけない。
だから、私は同じ操作性のカメラしか使わないのであーる。
それがわかってくれているのがEOS−1、3でそれを実現しているキヤノンだと思っている。

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