オレにはオレの撮り方があった
今回は、追加撮影という形となったわけだが、それは「再認識」という副産物をもたらしてくれた
わけで、それだけでも大収穫だったと思っている。
2回目の撮影も、これと言った具体的なイメージが出来ていたわけではなかったが、最初の撮影後
に、何かを感じたから実際に行動に出たわけだ。
一度決めたら動きが速いのが私であるが、そんな気持ちが萎える間もなく撮影したかったのである。
今回最後のロケ地となったのは、最初の撮影の時から気になっていた広島西飛行場である。
ここは、広島の中心部に近いがジェット機が離着陸しない小さな空港である。当然周囲にはフェン
スが張ってあるのだが、前の撮影で観音マリーナに向かう途中に通った時、撮り方によっては面白
いものが出来そうな感触を持っていたのである。
まぁ、空港は逃げやしないのでいつでも行くことが出来ると、その時は考えていた。
しかし、追加撮影をすると決めた時に、最初に浮かんだのがその場所なのである。そして、ラスト
カットはここで刻もうとも思った。ただ、どう撮るかが決まっていなかったのでる。
安易に考えてしまったのは、好きな・・・いや気になるカメラマンである魚住誠一氏ばりにカッコ
いいファッション写真風にでもしてみようかと本気で考えたりもした。
だが、この日も朝からずっとまなちゃんと一緒にいて、今まで二人でやってきた『素顔のままで』
を見返り、自分の本当に撮りたいものは何なのかを感じていた。
そう、私はモデルの女性を素材にして作品創りをするというより、まなちゃんを撮っているという
考えでやってきて、素材などとは考えた事も無いのだ。
キックボードだって、「今回はこれを小道具に使うから、ハイ乗ってみて」ではいけないと私は思う
のだ。実際にまなちゃんにあげて喜んで乗ってもらえるようでなければ、単なる小道具に過ぎない。
増してや、目の前で私の動きを追っているまなちゃんを見ると、その想いは確固たるものとなった
のである。
もう迷うことはない。夕方の逆光はまなちゃんの魅力を引き立ててくれる最高のステージでもあり、
それに身を任せて酔ってみることにしたのである。
そうと決まれば、ロケーション選びだが、マリーナに向かう幹線道路沿いではなく、もっと開けた
場所に行きたくなったのである。しかし、この時期の日暮れは早いので、素早く探す必要があるの
だ。そうしないと一番オイシイ光を逃すこととなる。せっかく天気まで味方させたのにもったいな
いじゃないか。
大体、不本意ながら方向音痴気味である上に、勝手の分からない広島の地であるが、こういうもの
を嗅ぎつける嗅覚はあるようで、迷うこともなくこの場所に来れた。
ここまで日が傾くと、完全な逆光はマズイ。いくらハレキリをしっかりしてもレンズが直射日光を
浴びるてしまうとフレアーが強く出るし、風が強くてアシスタントなしではハレキリは出来ない。
その点も都合がいいことに、半逆光という好条件が揃った。
これだけいい条件なのだから、場所を決めて10m以上動かないと決めたのだ。そう腹をくくると、
近所の犬の散歩道でもある場所でも何も気にならなくなるのだから不思議なものだ。
あとは二人で、集中力を高めていければそれだけでいいのは今までの経験で分かっていることであ
る。だから、どうするってことでもないのだが、まなちゃんが気持ちよくイメージの世界に入って
行けるお手伝いを私はしながら、それを確実に受け止めてあげることなのである。
そのためにには、誉めることもすれば思わず肩を抱いてしまうこともあるが、そんなことをしたよ
うな記憶があるだけのこと。
まなちゃんを乗せるための作戦でも何でもないのだから、いちいち覚えちゃいないのだ。
ただ、冷たい冬の風が心地よく感じるような素敵な時間が流れていただけのことである。