やっぱコミュニケーション


私がポートレートを撮っているとは、職場の女の子達は殆んど知らないのではないだろうか。
それは、職場の若い女の子達と仕事のこと意外殆んど口も聞かない私であるからなのだ。多分デカイ身体でむっつりした人ってイメージがあるかもしれない。
まぁ、多くは普段女の子と接する機会が少ないので、職場で間に合わせている人もいるのかもしれないな。
だいたい女の子を専門で撮っているヤツのイメージときたら、軽くて女好きで、目の前に女の子がいれば黙っていられない。近くにいなくてもいつの間にか側にいて隙あらばなにか話し掛けようとしているようなヤツを連想する人が多いのではないだろうか。ただし、撮影会専門カメラマンは除外だ。

まぁ、写真を見せたりするような女の子も中にはいたりして、そんな子とは相手が高校出たての18才であろうが、楽しく話せてたりして、ギャル誌を買って来てもらったりできるし、ファッションやメイクの話なんかもしてしまうので、その辺のオヤジどもとはぜんぜん違うようだ。たとえ部下であろうと、そんな話をしている時は同等なのだが、そのまんま舐められたままって感じもあるかもしれない。でも、偉そうにするのは好きではないのでそれでもぜんぜん構わないのである。

撮影するとなれば、初対面のモデルが相手の場合も多いし、今後はその傾向がさらに強くなると思うが、いい雰囲気を作る自信はあるし、その事についてはまったく心配していない。それは慣れの問題なのかも知れないが、モデルとして来るほどの女の子が相手であれば、生理的に受けつけないようなブスってこともないだろうから、どうにだって出来るって思っている。
リラックスさせるのが大事であるから会話は欠かせないってのが、ポートレートの基本のように言われているが、リラックスだけではぜんぜん不十分である。

過去に何度も撮影会に行ったことがあるが、機材に金をかけるのもいいが、もう少しマシな格好して来いよってヤツのなんと多いことか。そんなヤツを笑顔で迎えるモデルも大変な仕事だと思うのだ。お前この服何日着続けてるん?万年床ってのは聞いたことあるが、万年服はいただけないでー。ジーンズに擦り減った革靴やめーな。追っかけのついでにサーキットで買った着古したレーシングチームのTシャツ着て電車に乗ってくるんじゃねーよ。とにかく、女の子に接する時の格好じゃないだろう。オシャレをしろとは言わないが、男の私から見ても不潔っぽいんだよ、そしてオタクっぽい。先ずは、そういうところから何とかしないとね。

撮影前に会って話をしたり食事ができれば言うこと無いんだけど、そういう時って店に入ってテーブルにつけば、だいたい向かい合わせに座ることになる。そこではその女の子のいい表情を探したりしながら、撮影についてのお互いの考え方を話したり今まで撮った写真を見せてもらったりするのだが、いざ撮影しようとクルマに乗り込めば、あまり撮影については話すことは無い。

それよりも、運転席と助手席の位置関係と距離を大事にしたいのである。初対面であっても、二人っきりの密室であるクルマに同乗するってのは、警戒心はほとんど無いに等しいってことだと勝手に解釈させてもらっている。さらに、私のような大男の場合は抵抗のしようがないのだから。
そんな相手が手を伸ばせば触れられる距離で隣に座っているのだから、撮影論を戦わせるのは勿体無いではないか。
だいたい、テーブルをはさんで向かい合わせってのは他人行儀な感じがしないか? 同じ食事するにしたってカウンターで並んで座った方がいい感じではないか。そして、その微妙な距離感も大事なのである。クルマが無くたって心配はいらない、電車だって並んで仲良く座ればいいのだ。

撮影場所に着いたとしても、駐車場で撮影するわけじゃないから、いい場所を探して歩くことにもなろう。ロケハンが出来てたって、わざと遠回りするくらいでもいいのである。この一緒にお散歩タイムが非常に重要だからだ。そしてアベックがそのままベンチに座るように撮影が始められれば、取ってつけたような不自然さが出る方がどうかしている。
そこでも、同じベンチの隣に座り広角気味のレンズで撮って絶妙感が出せたりすれば、もう何も心配はいらない。

いつだったか、TVで面白い実験をしていた。何人かの女性を呼んでの実験であったが、一人の男がその女性達を一人ずつ部屋に案内して、「ここで待ってってください」と言いながら椅子に座らせるだけなのであるが、何人かの女性にはそれだけを継げて椅子を引いてあげるわけだ。そして残りの女性達には、椅子に座らせる時にそっと背中に手を添えるという動作を加えるのである。その後、全員に案内してくれた男についての好感度を調査した結果、背中に手をそえられた女性達からはかなりの好感度が得られたというのである。簡単に言えば、スキンシップの重要性ってことになるのだろう。
だからと言って、嫌がられてしまってはどうしようもないのであるから、そこんとこ勘違いのないように。また撮影会ではないのだから、客の特権は通用しないということも肝に銘じておかないと、えらい目にあうぞ。


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