楽しそうに撮る
そろそろ50万ヒットも見えてきたようだ。団体でもなくアイドルやアダルト系でもないサイトで、まさかこんなに順調に来るとは思いもしなかったが、どこにでもあるような写真サイトにしなかったのがよかったんだろうか。元来「ミギへナラエ」って日本人が考えそうな単語が嫌いなもんでね。
撮影雑記を書くと決めたものの、ポートレート関連だけに絞るのはかなりしんどいことだったが400話を越えてしまった。原稿用紙に換算すれば2,500枚ぐらいだろうが、書いている本人が一番驚いている次第である。
「よくそれだけ書くネタがありますね」と言われることもあるが、モデル一人一人、撮影それぞれ、ワンシャッターごとに同じ状況は存在しないのであるから、それを思い浮かべるだけでいくらでも書けてしまうし、私だって5年前とは撮り方も考え方も日々変化しているのだから、苦労して書いているわけでもないのだ。ただ、書き続ける気力だけの問題だと思っている。
大きな転機として方向性を決められたのは、まなちゃんとの出会いだが、いいパートナーに恵まれたと思っている。
まなちゃんに感謝していると書けば、「またこれかよ・・・」って声が聞こえて来そうだが、そう思う人は、ベストパートナーとの出会いを経験してない人なんだよ。
まなちゃんが言うには「モデルをするってことに、お金以外の喜びや意味みたいなのが感じられるようになった」ってことだが、どうやってその部分を埋めてもらえる価値を見出してもらうかが、一番のポイントなんだが、私は何の戦略も持ちあわせていない。
極端な話、行き当たりばったりとも言えるが、常にその時の相手の状況に応じて、引っ張って行きたいとは思っている。
もちろん写真を気に入ってもらえることは大事であるが、どんな写真が撮りたい?って聞いてそれをそのままやることが、それを叶えてあげたことだとは思っていないし、したこともない。
私流に撮った結果をスリーブ丸ごと見せて、何を感じてくれるか・・・ これしか私は出来ない。
「楽しそうに撮ってますね・・・」結局これにつきるのかもしれない。いつだったか、撮っている時に、モデルが何気に発した言葉であるが、そんなこと言われたのが初めてだったのでよく覚えているのだ。
そう感じたモデル自身も気分の悪いはずは無く、物怖じしないモデルだったから思ったことを口にしたのであろう。
私自身どんな撮影をしているのか客観的に見たことはないし、楽しそうな顔してたかは分からんが、撮影している私のすべてからそれを感じたのであろう。
それが伝わったってことは、考え方を変えればどんな誉め言葉よりも効果的だったのではなかろうか。確かに何度か誉めたりもしたが、カメラマンの誉め言葉なんか聞き飽きているはずである。
実際、私もそう言われた時に「モデルがすごくイイからねー」って答えたが、そんな陳腐な言葉の何倍も意味があったのかもしれない。
久々のヒットだと思いながらの撮影であったが、撮る事に必死になっていなかったのが良かったのかもしれない。誠心誠意、精一杯撮るのと、なりふり構わず必死で撮るのとは違うと思うのだ。二人っきりで公園に行って、機材のセッティング中もレンズやフィルムの交換の時も、常に彼女の存在を感じながら、そして何やら話し掛けながらであるが、別に意識してそうやっているわけではない。だからって、いい加減に撮っているつもりもないが。
こんな撮り方であるが、カメラを構えてしまうと打って変わって別人に変わってしまうこともなく、そのままの延長でシャッターを切っている。それはまなちゃんとの撮影で染み付いた私の撮影スタイルである。であるから、手の位置や服のシワの状態とかをこと細かく計算した撮影など出来ていないのは、重々承知の助である。
しかし、後でそれを後悔するようなことは殆んど無くて、一緒に共有したその時の空気感が大切に出来た事実には変え難かったといつも思うのだ。
まなちゃんもそうだが、欲が無いモデルってのがいる。だいたい、ガツガツしたのは逆に引いてしまう私であるが、私の経験ではそう言う子に限ってイイのである。
そう言えば、友人の磯村氏もYUKAちゃんは欲が無くて拍子抜けするなんてことを言っていたが、私も仕事ではあったが一度撮る機会に恵まれて、それは充分に感じた。
良く見せようって余計な意識が働かないのが逆にイイ方向に回っているのだと私は勝手に分析してしまう。
また、そんな思いばかりで満たされているモデルからは、キラリと光るものを感じないってのが持論でもある。
とにかく自然体でいて欲しい私であるが、まなちゃんだって写真になるとしっかりモデルの部分が出てくる。しかし、それも無駄な力みもなく自然体をベースにしてくれている。そんなモデルの姿を見ていると、つい私も楽しそうに撮ってしまうのであろう。
そう言えば、過去に撮影会でせっせとひたすら撮影に没頭している人の姿を数多く目にした。あれだけ少人数の撮影会で、なぜもっとコミュニケーションを取らないのか不思議でならなかったのだ。特にレフ係りなんかをしていると、薄気味悪いほどの沈黙の中でシャッター音だけが響くのが耐えられなくなってしまう。他のカメラマンに遠慮があるのであれば、大きな勘違いである。
また、イイ写真を撮ろうと真剣になるほど寡黙になってしまうのなら、そんな癖は即刻改めるべきで、モデルが上手くてサービス精神旺盛だから何とかなっているだけなんだから。