あなたはどのタイプ?


カメラマンと言えども色々あらーな。ドライバーのジャンルでも運送業もいれば、かたやレーシング・ドライバー、テスト・ドライバーなどは、クルマの状態を五感で感じ取り、最高の状態に持って行くのだ。その点、タクシー・ドライバーは、とにかく道を知っていることが最大の武器で、後は接客業とも言えよう。それに、サンデードライバーだっていれば、お買い物ドライバーも、送り迎えドライバーもいるだろう。

トラックやバスのドライバーは、確実に時間通り積荷や乗客を運ぶことが最大の使命であり、その途中で工夫や努力があるとすれば、大きな車体をいかにコントロールするかと、腰痛や眠気との闘いか。
しかし、私は写真界の運送業にはなりたくないのである。写真の世界では、風景写真は、流れる時間はゆったりしているようだが、最高のシャッターチャンスは一瞬にして過ぎ去ってしまったりするし、同じ被写体をいかに自分流の味でモノにするかに全精力を傾けるわけで、私が最初にはまった世界でもある。

本題の人物写真に目を移せば、商業ルートに乗っかったファッション写真等は運送業と同じ感覚なんだと思っている。
最近は、特にファッション雑誌の特集をTVで見かけることが多いが、人気の押切もえとかをモデルに撮影しているシーンが定番となっている。
しかし、もえちゃんが自分の持ち技を順に繰り広げているのに合わせてシャッターを切っているだけなのだ。あれこそ、時間通りに停留所に停車している路線バスと同じ撮影。
しかし、あーいった類の雑誌にも中をじっくり見ていると、モデルといい空気感で撮れてるのを感じさせてくれるページもあるし、表紙なんかはお互いいい仕事してると思わせ、これはポートレートだなと感じるものも中にはある。
だからって、それを批判しているのではなく、あれはあれで立派な職業カメラマンとしての仕事であるし、ちゃんと目立たないところで作品撮りが出来てるカメラマンたちである。

同じ人物写真でもポートレートに絞って考えると・・・ってファッション写真と同じだと思っている人は、ココを第一話から読むべしなのだ。
風景写真のように自分で工夫することプラス、相手が血の通った人間だという要素が加わる。
撮られることに慣れたプロのモデルを相手にした撮影会や、イベントでの撮影でいい写真が撮れていても、この時代のカメラをまともに使えれば、そこそこの写真が撮れて当然で、失敗する要素が私には考えられない。こんな撮影でポートレートの達人になれたと思っている人は、一度素人の女性を撮ってみればいい。これまでの自信が虚像だったと身に染みてわかるはずだ。

「撮る相手がいないから仕方ないじゃないか」なんて口を尖らせている人は、その時点で女性ポートレートを上手く撮れる領域外にいる人だ。
撮影を頼めるような女性が周りにいないのもかなり問題だし心配。もしそうだとしても撮りたいと思った相手を見つけてもお願いできないようであれば、いざ、マンツーマンで撮影が始まった時に、まともにコミュニケーションがとれるとは到底思えない。
幸いにもこれが出来る環境にいたり、ほんの少しの勇気があって、撮影に望めたとしよう。相手が素人であれば、「なんでグッとくるポーズや表情をくれないんだ・・・」って思うことだろう。こんな馬鹿げた疑問の次にくるのが、「自分でなんとかしなければ・・・」という焦りにも似たアタフタ感だ。
それをどうにかクリア出来たとして、まずまずの写真が撮れていれば、次のチャンスに恵まれることだろ。そうして場慣れしていけば、不思議と上達していくものなのだ。そして、なにより大事なのは自信がつくこと。
そうなると、モデルの芋づる方式が成り立って、口コミでモデルの輪が広がってくる。

完成品の助けを得れば、いい写真が撮れるのは当たり前。こちらを頼りきり、すべてを預けてくる相手と、いつしかパートナーとして感じあい、最後には力を貸してくれる共演者にまでお互いで登りつめたいものである。そこまでには、何度かの撮影期間が必要になるかもしれないし、ほんのひと時でそんな風になれることもある。その過程を楽しむ余裕も必要だ。


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