心動くロケーション


構図の話題が出たついでに、次はロケ地選びについて触れてみることにしようか。
もちろん、スタジオでの撮影は楽しくないのでここでは除外だ。
桜が綺麗とか、紅葉が見ごろだからとかも、充分ロケ地選びの選択基準にはなり得る。しかし、それがどれだけ有効かと考えると、私なら余り意味がないと結論を出してしまうだろう。まぁ、脇役の中のひとつにはなるだろうが、画面を華やかに飾りつけるような撮影に興味のない私であり、モデルの感情の流れと表情を重視したいので、それを助けてくれる場所に行きたいと思うのである。
仮に桜の時期に撮るとしても、花見の名所に出かけるなんてことはまずしない。確かに絶景は見れるだろう、それだから人が溢れるのだ。そんな場所より、クルマで静かな丘にポツンと立っているような桜を探してドライブを楽しんでからの方がよっぽどいい。
欲を言えば、途中で花見弁当でも買って行ければ言うこと無いが、なんでアンタなんかと二人っきりで、お花見デートしなきゃならないの?なんて思われると逆効果どころではないので、常々私がここで書いていることが大前提となる。

それとか、あっと驚くようなシチュエーションを用意してあげるとかも、自然にテンションが上がって喜んでくれるし、頑張ってくれるのである。
まなちゃんとの撮影の3回目のことであるが、事前に須磨海岸をロケハンしていたわけだが、その時から夕方日が落ちかけた時間帯にクルマのヘッドライトでライティングし、タングステン・フィルムで撮りたいと計画していた。そこで、通りかかったお巡りさんに、ここにクルマを乗り入れる許可を取りたいと言ったところ、ここは猟師さんの管轄だから、そっちに頼んでみれば?ってことになった。さっそく、その足で網の補修をしている猟師さんと話をしたのだ。最初はいぶかしげな顔をしていたが、モデルさん連れてきて撮影したいんですって言った途端にOKをもらったのを覚えている。

それ以外では、瀬戸内海に浮かぶ犬島に船で渡ってみたり、シーズンオフのスキー場のペンションを借り切ったりもしたし、大林宣彦監督の映画でお馴染みの尾道にもまで行った。
もちろん、これからの夏の撮影では少しでも涼しい場所に行くことを心がけたいものである。
違った意味でのロケ地としては、モデルの生まれ故郷に行き、子供の頃に遊んだ場所での撮影だったりと、私なりに心が動く場所を考えているのである。
または、広島の古い空港に行った時は、「そういえばここは子供の頃にお父さんに連れてきてもらったよ」って聞いて、どうりでいい表情をしてたんだと合点がいったものだ。
時には、適当に公園で撮るだけではなく、気の利いたロケーションを用意してあげたいものである。

実はしばらく続編を撮れていなかった、まなちゃんとの『素顔のままで』を再開して第31弾を撮ろうかと言う話がここに来て持ち上がっているのである。今は広島ではなくて神戸に住んでいるまなちゃんなので、あの頃と比べると目と鼻の先の距離である。しかし、それが逆にロケーション選びで悩むところでもあるのだ。さて近場でどう撮るか、これから考えなければならない。
かなりの長きに渡ってまなちゃんを撮っていないので、かつての呼吸がすぐに復活するものだろうか。広島に通い詰めていた頃は、目に付いた撮影ポイントで急遽撮ることになっても、何の心配も無くお互いの身体が自然に動いたものだった。
まだまだ、レンズが揃いきっていないD300でのシステムで撮ってみようと思っているが、まなちゃんとの撮影であれば、標準系のレンズだけでも作品は押さえられると自信を持っている。また、私の撮影の基準値とも言える撮影を行なうことで、DXフォーマットにおける今後のレンズ構成のプランも自然に出来上がることであろう。


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