ポートレートのようにはいかない
シグマのレンズが元気だ。タムロンもトキナーも頑張ってついて来ている。以前はサードパーティ製と言えば、カメラメーカーのレンズが高くて買えない人向けみたいな感じがしていたが、最近は性能面でも上回ったモノが出始めている。痒いところに手が届く製品も有り難いし、純正のラインナップの隙間産業ではなくなり、真っ向から勝負出来ていて、頼もしい限りである。
アマチュアが集まる撮影会やイベントは機材自慢の場でもあり、写真の腕は表面的に表れないことも手伝って、高いレンズを持っていくことが目的のひとつである風潮はなかなか消えるものでは無い。
その点、個人撮影ではモデルのほとんどがカメラのことなど気にしないのであるから、結果こそがすべてとなる。
とりあえずは、D300でポートレートを撮る最低限のレンズは揃っているので、買い足す予定は今のところないが、選択肢がレンズメーカーにまで広がったのはとてもいいことである。
それは、ボディがデジタルになってから、半年刻みで新しい機種を最新技術を盛り込んで発表しなければならない現状がカメラメーカーがレンズメーカーに追いつかれている要因になっているのかもしれない。しかし、シグマはカメラにも意欲的に取り組んでいるから、そういう単純な理由だけではないかも知れない。
ボディを造っているメーカーの方が自社のボディで最高の結果を出すレンズを造ることにおいて絶対的に有利であるのにもかかわらず。
アクセルを一旦抜いたカメラメーカーのレンズ部門が、一気に加速してきたレンズメーカーに並ばれたわけだが、その勢いを挽回するのは大変だと思われる。特にこの不況の真っ只中であるから、逆にユーザーにとって辛い値上げが決定しているぐらいだ。
先日は、久しぶりにポートアイランドに行ってきた。以前は隅々まで知り尽くすほど行っていたポーアイなのだが、空港が出来る前ぐらいからほとんど行く機会がなかったが、かなり様変わりしており、自分が何処にいるのか分からなくなってしまいそうだった。
昔のコンテナバースは大学のキャンパスとなってしまっており、積み上げられたコンテナの間に入り込んでの撮影も難しくなってしまった。新しいコンテナバースは、セキュリティが厳しくなったようで、柵で囲まれて自由に入れなくなってつまらない。南港も同じようになってしまっているのだろうか。
今日の画像のように一直線の道路があり、四角いコンテナが巨大ルービック・キューブのように重なっている場合、レンズの歪が顕著に現れる。現像時に補正が簡単に出来るのはデジタル時代の有り難い恩恵である。
まぁ、こうやってクルマの写真を撮る場合は、AF-S DX VR18-200G 1本で手抜き撮影することが殆どなのである。
しかし、荷物が重くなってもいいレンズを使わないといけないなって後になって思うわけだ。以前は巨大なカメラバッグを常に持ち歩いていた私であるが、デジタルになってからこんなキットレンズだけで手を抜きだしているようだ。デジタルで便利になって怠け者になったのか、便利な安くて軽いレンズだけで撮ってしまうようになっていることは大いに反省しなくてはならない。
ポートレートの場合は、何をさて置いても表情を重視している私である。コミュニケーションや撮影中のアクションでそれを引き出すわけだ。もちろん、それにはロケーションや季節などの要素も絡んでくる。
しかし、被写体がクルマとなれば話は違う。何をしようが表情は硬いままである。ヘッドライトが目でフロントグリルが鼻から口にあたるのか、顔に見えないことは無いが表情に変化は無い。
ヘッドライトを点灯すれば目力が出るかもしれないが、これぐらいしか変化のつけようが無いわけだ。
右や左に動く前輪はモデルの手の動きのようなもので、ポージングに大きな変化をもたらしてくれるが、これもやりすぎるのは良くない。
かしこまった記念撮影のような不自然さが私は気になるのである。確かにステアリングを切り込んで撮った方が、動きが感じられるしスタイリッシュでもある。しかし、真っ直ぐ走ってきて停車した場合は、タイヤは進行方向と平行になっているのが普通なのである。そこに、非現実性を感じてしまうのは私だけだろうか。私がポートレートで現実と非現実の狭間で悩んでいたことがここでも出てきたことになる。
鉄の塊であり、機械であるクルマだが、どうしても生き物にイメージを重ねたくなってしまう。スポーツタイプのクルマであれば身を低くして飛びかかろうとしているような獰猛さを表現したくなるのである。
ポートレートと大きく違うところは、ツルツルの鉄板とガラスで覆われたクルマは衣装を替えることは出来ないが、映り込みで色んな面を見せてくれるということだ。しかし、それも積極的に利用して、イルミネーションを写し込むとかで、夜に撮影とかをすればいいのに、それも出来ていない。やっぱり女の子と一緒のポートレートじゃなきゃ、ダメなのかも。