ナノクリの効果と今後のレンズ選び


ついに501話まで来てしまった。撮影雑記としてスタートしてこんなに続くとは私自身も思っていなかった。一時期、長期に渡って休刊したりで危なっかしかったが、なんとかここまで来たが、今後も続けていくし今年はポートレートの新作アップも考えているので、今後とも宜しくなのである。

道路工事のシーズン真っ只中である。ちょうどそれに自宅の駐車場の前の道が当たってしまったようで、先週から掘り起しが始まった。そうなると土埃がすごい事になるが、それに強風が加わってボディはドロドロ状態。さらに雨が降ったものだから、ヒョウ柄状態となり、余りに恥ずかしいので先週は一度洗車を行なった。しかし、今度は舗装工事が始まり、古いアスファルトをめくって大量の土砂を敷きだした。もう洗車しても意味がないと判断し、週末はそのまま乗ることにしたのである。

そんな感じで、今週は撮影は無理だと諦めていたのである。そんな感じだったが、天気のよかった日曜日の日暮れ時に河川敷の道路を走っていると、まさに今沈もうとしている夕陽がいい感じである。思いっきりの斜光線を逆光にして撮れば、ボディの汚れも目立たないのではないかと思ったわけだ。丁度、クルマのワンセグ画面では大阪場所の初日で朝青龍が結びの一番で勝ち名乗りを受けたところだから、夕方の6時である。いつの間にか日も長くなったものである。
しかし、この時間帯の撮影はもたもたしていると太陽が完全に沈んでしまうので道端に停めてさっそく撮影。マルチパターン測光のままで一枚撮ってモニターを見ると、クルマは当然のことながら真っ黒な状態である。私は迷わず、銀塩時代に腕を磨いたスポット測光に切替た。いくらカメラが賢くなったとは言え、こんな状況では思い通りに撮れるはずはないのである。

測距点がスポット測光と連動してしまうD300では、私の慣れ親しんだ中央で測光してAEロックではなく、フロントグリル辺りを測光して、マイナス補正値を行なった。もちろん計算した補正値で思った通りにボディの質感が表現できたが、太陽が飛んでしまうのは致し方ないところ。ここでハーフNDフィルターでも持っていればもう少しなんとかなったわけだが、これ以上はどうしようもないところである。
また、ボディが黒っぽいこともかなり影響していて、これ以上露出を切り詰めることは出来ない。明るいボディカラーであったなら、もう少し空の色を出す露出にしても、クルマの質感は出せることになる。

これまで、普段は AF-S DX VR18-200G 1本で撮っていたのを、その日は AF-S 24-70mm F2.8G ED をD300に付けていたことが、こんなシチュエーションで撮ってみようと思ったきっかけである。
安いレンズであれば、これだけ太陽をフレーミングしてしまうと、多少のフレアーとゴーストの発生は避けられなかったはずである。その点、ナノクリスタルコートのこのレンズでは、ファインダーの中もクッキリ見えて気持ちがいい。仕上がった写真だけを見れば、何とも思わないだろうが、このレンズであったから撮れた写真である。
せっかく大枚をはたいて買ったのだから、こんなシーンで使わなくては宝の持ち腐れになってしまうってところだろう。

逆光をいかに上手く使えるかが写真の出来に大きく影響するわけで、特にポートレートがそうだが、クルマでも風景でも雰囲気を出そうと思えば逆光で撮ることは少なくない。
カリフォルニアの青い空をバックに黄色いボディのマスタングを撮ったりする時は、順光で撮るのが一番雰囲気が出るだろうが、そんな写真だけでは進歩がない。しかし、フレアーが思いっきり出てしまうと、こんなシチュエーションで撮る気が失せてしまうのは間違いない。

ただ、このレンズは標準ズームと一般的に言われるもので、ポートレートで多用する焦点距離はカバーできているものの、クルマや風景を撮るとなれば広角と望遠が物足らなくなってくる。広角は太陽が入り込むことが多いのでナノクリは有効だとは思うが、どちらかと言えば200mmクラスの望遠が欲しいところである。特にクルマの撮影では望遠で撮る方がスタイルが自然に撮れるのと、余計な背景が整理できるので多様しているのである。もちろんポートレートでも開放での望遠撮影は定番である。
しかし、70−200の大口径ズームでナノクリが出たら、かなり高価なレンズになるのは目に見えている。そうなると、飛躍的に性能がアップしてきたサードパーティ製のシグマかタムロンも視野にいれなければならないと思っている。ニコンのナノクリが口火を切った格好で、レンズのコーティングが再認識されたわけだが、ライバルのキヤノンも黙っているはずはなく、大慌てでSWCを登場させて対抗しているが、このような技術競争はどんどんやってもらいたい。勢いがあるレンズメーカーの頑張りに期待しているが、なかなか負けてない安くていい物を出している。

昔のレンズは逆光で撮ると派手にフレアーやゴーストが発生していたが、結果オーライでそれをいい効果として頂いたこともあった。しかし、スッキリと写ってくれるに越したことはないわけで、逆光に弱いレンズはそれはそれで使うタイミングがあるのだ。特に安価なレンズでは半ば諦めていたところもあったが、最近はレンズメーカー製の良心的な価格設定でいいレンズが本当に増えてきた。科学技術の進歩たるや凄まじいものがあるが、ますます感性で勝負する時代に突入ってことである。

後は、ニコンとキヤノンのユーザーの悩みの種はボディ内での手ブレ補正がないことだろう。それをいい事に高価な手ブレ補正レンズを買わせる仕組みを作り上げている。それをやってもこの2社が殆どのシェアを維持できているのは、とんでもなく強力なブランドイメージの恩恵なのだろうか。いいカメラを作っていても、私など古い人間はSONYの一眼レフってしっくりこないのである。
10年ほど前に、初めてキヤノンのISレンズを使った時には、その効果をはっきり体感出来たような記憶がある。しかし、それはひょっとしたらレンズ内で駆動している補正レンズの影響で不自然にファインダー像が見えたことが効果として感じただけなのかもしれない。と言うのも、最近のニコンのVRレンズでは手ブレ補正が効いていることにまったく気付かない私がいるのである。不自然なファインダーの動きに慣れてしまった今となっては、それほど有り難い機能だとは思わなくなっている。何かの拍子にVRがOFFになっていても、気にせず撮っていることがあり、それでも200mmで手ブレは起きていない。D300だから35mm換算だと300mmでもISO感度が変えられることもあって、それほど問題とは思っていない。
そうなると、廉価版の18−200より重量級の70−200の大口径の方が私は安定するので、さらに手ブレの心配はないことになる。そうなると、わざわざVRのために古い設計の高価なニコンの純正は不要なのかもしれない。誰かに見栄を張る必要もまったく無いことだし。


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