春だ!ロケだ!
ETCがドライバー必須アイテムとなった今、遠方へ撮影に出かけやすい状況になってきたことは確かである。と言っても何処へ行くべきか浮かばないのだから情けない話である。以前は仕事終わりの金曜の夜に出発して関東や広島までノンストップで走って行き、日曜に関西に戻るなんてことをよくやっていたものである。しかし、それが億劫になるってことは歳のせいだけだろうか。
せっかく荷物が沢山積めて、車中泊もしやすいクルマになったというのに・・・もちろん簡単に200km/hオーバーの速さも兼ね備えているから不満は無いはずである。せっせと、エンジンのパワーアップを行い、休日はいつも朝からボンネットを開いてごそごそやって、通勤だけにしか乗らないなんてもったいないことだ。そうなると足らないのは、単に気持ちの高揚だけか。
今でも中央高速の気持ちよさと、夜の中国縦貫道のドライブの楽しさはよく覚えている。岡山の途中から広島にかけて高速コーナーの連続となり、その区間は60km/h制限になる。しかし、ガラ空きのそんな道路をサーキットを走っている気分でライン取りを考えながら駆け抜ける爽快さは何ともいえないものがある。向かう先では、まなちゃんがお腹を空かせて待っているってのがあったのは言うまでもない。そういえば、雨の中を走って行っても、翌日は朝からいつも快晴に恵まれたのは、今思い出してもラッキーであった。
ポートレートは本来くたびれる撮影である。そりゃ、風景写真も早起きは当たり前で、山に登ったり海に潜ったりと肉体的な疲労はあるだろう。そりゃ自然が相手であるから、危険も伴うし疲れないとは言えない。しかし、相手が人間となると、言葉で言い表わせない部分の消耗がある。それはカメラマンにもモデルにもあることで、そこを物理的に調整できる部分もあって、集合時間や移動距離、休憩や食事のタイミング。それに女性のモデルであれば着替えたりメイクする場所やトイレの問題は常につきまとう。そのどれかが不十分であればストレスになるのは当然のことである。
まなちゃんとか、仲のいいモデルが相手であっても、その部分で手を抜くのはいけないことである。しかし、ロケ地によってはトイレなどの確保が難しいことは多く、それを考慮してスケジュールを立てなければならないし、気遣いを忘れたことがない。
自分ひとりでの撮影であればどうにでもなることが、お洒落をした女性モデルが一緒だと細心の注意が必要となる。それが出来ていないのに気付かず、モデルが不機嫌だから撮影がし難いとなどと感じているカメラマンも居るのではないだろうか。
それに、女性特有の体調不良というものが定期的に訪れるのは、誰もがわかっていることだろう。腰痛などの体調不良以外にも、イライラや肌荒れなどの症状もあるだろう。だた、その症状にはかなり個人差があることは、男はあまり理解していないかもしれない。その時期は頻繁にトイレにも行きたいだろう。無理なダイエットをしているモデルもいるし、夜遊びが好きな子も多く、そういうタイプは不順が原因なのか、症状が重い場合が多い。
体調不良や睡眠不足で朝は不機嫌なのに、徐々に良くなっていき、日が暮れる頃になってノリノリになるモデルも経験している。とにかく、モデルあっての撮影であるから、叱り飛ばして帰らせることは簡単であるが、それは出来ないから、こっちがなんとか撮影と気遣いでカバーしてやらねばならない。
そんな苦労というか当然の気配りというか、ポートレートを撮る上では肝に銘じておかなければならないことで、風景写真家が天候をどうすることも出来ないのと同じで、相手の調子に上手く合わせてなんとか撮影を成功させなければならない。
そして、相手に合わせながら自分のペースに持ち込めればしめたものだ。天候だって、曇り空ならそれに適した撮り方があるように、モデルの気分や体調には常にアンテナを張っておく必要があるわけだ。
その点、まなちゃんは常に元気で協力的であり、ついつい私が無理をさせていてハッと気付いたことが何度もある。その分はフォローを欠かしたことはないつもりだし、まなちゃんもそれに応えてくれる。
長い付き合いになっても、彼女や嫁さんではないのだから、最低限の暗黙のルールもあれば超えてはならない線はある。