すごいカメラマンが出てくる予感
ポートレートに限らず、写真人口が増えてきているのを実感する。と言うより、一昔前に「写ルンです」をバッグにしのばせていた人も、今ではデジカメのひとつやふたつ持っている時代である。それじゃなくても、携帯電話にカメラ機能がついているのは常識になってきた。
だから、広い裾野は薄型のコンデジなんだろうが、一眼レフに動画機能が付くようになって、さらに動きが出てきそうだ。
桜が咲きだすと、携帯のレンズを向けている姿をよく見かけるが、すっかりデジタル写真が生活の一部になったようだ。
フィルムを買い、現像してプリントとそのたびにお金がかかる銀塩写真から、一気に普及した感じだ。なによりもランニングコストが安いのがいい。詳細に計算すれば、高性能なPCや現像ソフトが必要になるなど、出費は必要だが、それは目立たないようだ。PCは他でいくらでも有効利用できるから、痛い出費にはならないだろう。
一家に一台PCがある時代も近いし、携帯やデジカメの液晶もどんどん大型化しているので、気に入った写真だけを安くて余裕がでてきたメモリーに保存して持ち歩いて観ている人もかなり多いはずである。
画素数は1,000万オーバーが常識になり、携帯のカメラもそうなりつつあるが、大多数の人は画素数が多いことで充分に満足なのである。画素数こそがデジタルカメラの性能の物指しだという世間一般の思いがある以上、仕方の無いことである。
画素数がクルマの排気量と同等と考えている人がほとんどなのだから、メーカーもその無知さを上手く利用して商売をしている。昔はキヤノンどっぷりだった私だが、今ニコンに移って客観的に見るとキヤノンもその路線を突き進んでいるように感じる。Kissシリーズの画素数がどんどん高くなっているのは、いささか疑問である。
D3sよりも高画素なのだから、いかに画素数だけで性能が語れないかが明らかである。
また、カタログでの誇大広告と思える表現で、キヤノンはかなりクレームが来ているらしいが、確かに中級機のファインダー視野率を簡単に100%と謳い上げるのは無謀であったと思われる。
実際はかなり下回っていたということだが、売らんがための広告と非難されても反論出来ないだろう。さらに、慌てて改訂版のカタログを出すほど格好の悪いことは無い。いつまでもユーザーを見下した商売が出来ると思わないでいただきたい。
たいした写真を撮ってなくてもスペック至上主義のユーザーは多いし、それを煽っていたのもキヤノンなのだから、仕方がないことである。ユーザーの数が増え時代の流れもあって、メーカーは今後、さらに慎重にそして真摯な商売をしなくてはならないのだ。
また、ネットで製品を宣伝できると同時に、悪評も一気に広まることを肝に銘じる必要があることを思い知ったかもしれない。
しかし、画質を見極める力など大多数のデジカメユーザーは持ち合わせていないので、なんとなく不思議な感じを抱きつつも、喜んでKissに群がるわけである。
1800CCのエンジンを積んだ軽自動車と、1210CCのレクサスってへんだなーって思わなければ、よっぽど何も考えていないお馬鹿さんなのだが、そのお馬鹿さんが多いのが、まだまだ現実なわけだ。
でも、そんなお馬鹿さんの数が急増しているので、その中から少しでも写真に対して真剣に取り組むお利口さんが出てくると、これからの写真の世界はかなりの激戦になることだろう。分母の絶対数が増えることで埋もれていた才能が見つかることになる。
その中でも、センスのある人が勝ち残ることであろう。昔と違って写真を撮ること自体に技術的な訓練と知識はそれほど必要がなくなってきているのだから、センスのあるものが生き残れる時代がくるはずである。
いくら、カメラ操作や知識が豊富でも、アイディア豊富にイメージが創造できる人には敵わない。
それが特にデジタルになってからは決定的になってきている。露出なんて何度でもその場で撮り直しが出来るようになったことで、リスクを恐れずに挑戦できてしまうから、大化けするカメラマンが出てきてしまうことが予想できる。
あー恐ろしい、プロカメラマンは生き残りを賭けた戦国時代に突入だ。
実際、デジタル時代以降に写真にはまって頑張っている人の写真を多く見かけるようになった。いきなりそこそこ撮れてしまうから、どんどん熱中しているようだ。
何より彼らの熱意がすごいなーって思うことが多い。
行動力の源は熱意以外ないと思っている私であるから、きっと彼らは伸びることであろう。
逆に、銀塩で思いっきり突っ走った私などは、デジタルは余りにもあっけないと思ってしまわないようにしないと、雑な撮影になってしまう危機感を最近感じはじめているところである。
しかし、デジタルカメラは3年経てば旧モデルで粗大ゴミなんて、機材オタクが書いていたりするのを見るにつけ、腹立たしくてしょうがない。私のD300も3シーズン目に入ったが、なんら支障を感じない。DXフォーマットであることで物理的に写りがFXフォーマットと違うことはD300を選んだ時から承知の上で、デジタル機器として陳腐化したなんて思っていない。
裾野が広がったことで、写真のセンスのある人が増えそうと期待しているが、その数字以上のデジモノに興味がある余計な人が増えているようだ。まぁ、彼らがメーカーの売り上げを支えているんだろうが、じっくり写真道を歩もうとしている、前途あるビギナーに余計なチャチャは入れて欲しくないものだ。