光で決まるポートレート


ポートレートの出来の善し悪しは当然モデルの美しさが一番なのだが、これを生かすも殺すも光り
の選び方というか創り方が大事なのだ。
カメラというもの、レンズの前に美女が微笑もうが、泣こうが関係ないのである。光がなければ何
もフィルムに写し出す事はできない。
とにかく、光がなければ写真は撮れないのであるが、ここではそんな分かりきったことを云々言う
気は毛頭ない。

よく、観光地では記念撮影があちこちで行われているが「こっちは逆光だからここはあかんなぁ」
という声をよく耳にする。
本当にそうだろうか・・? 順光でハイ!チーズなんてやってる人の顔には汚い影がたくさん出来
ているのに気が付かないのだろうか? 鼻のてっぺんとほっぺたはテカテカに光り輝いているし、
前髪が作る影が綺麗に化粧をほどこした目を覆い隠している。
しかし、人間の目というものは実に都合よく出来ていて、その影に気が付かないのである。但し、
写真は正直であるし、竹を割ったようなハッキリとした性格なのである。明るい所は明るく、陰に
なった所は暗く写し込んでしまう。それに、その許容範囲が狭いと来ている。そうなると鼻のてっ
ぺんは白く、影の部分は黒くなってしまう場合がある。それは同じ顔の部分の明暗差が大きいから
である。

それでは試しに回れ右をしてみようか。確かに逆光ではある、しかし顔には直射日光が当たらず、
程よく均等に光が回っているはずである。オンナの子のポートレートの基本はこの光なのだ。
野郎の場合は多少メリハリがあった方がキリリと写せるのだが・・・。

さて、逆光は基本的に失敗写真になるからタブーであった時代は終わった。カメラの性能は格段に
良くなっているのだからプラス補正で挑戦して欲しい、愛用のカメラにスポット測光なんかが付い
てたらラッキーである。撮影方法は以前書いたので、ここでは書かないがちっとも難しくはない。

これで、顔に直射日光を当てないことは分かった。逆光じゃなくても木陰に入ってもらえばいいの
だ。特にトップライトの時は有効だ。ちょっとアクセントに木漏れ日なんかを使ってもいいかな。

それから、大事な事はバックとの明暗差をどうコントロールするかである。これによってはせっか
くのバックも台無しになってしまう事がある。
いくつか例を挙げると、バックに木々が茂った林があり、モデルの顔の明るさよりかなり暗ければ
真っ黒に落ち込んで写るので、黒バックのスタジオのようになるし、海岸などできらきら波に反射
する光がバックの場合は顔が明るければ、奇麗な逆光キラキラバックにすることが出来る。
この2例はどちらもレフや日中シンクロで顔を明るくしてやってこそできることである。
では、モデルにライティングをしないとどうなるか。林の場合は顔と木々の明るさが近くなるので
バックの木々がフィルムのラチチュードの範囲内に収まってしまい、中途半端に暗いうっそうとし
た雰囲気のバックになってしまう。
波間の光のケースは顔に対してバックが極端に明るいので、顔を基準に露出を決定するとバックは
ただの真っ白けになってしまい、せっかく海に来た甲斐が無いってもんだ。

このようなケースはスポット測光で、顔を測った時についでにバックも測って明暗差を確認する習
慣をつけるといい。しかし特にバックがとても明るい場合はそれに見合った明るさをレフで作ると
なると、銀レフをダイレクトに当てることになるが、それをやられるモデルはたまったものではな
いので、ストロボをシンクロさせるって手もあるが、ハイスピード・シンクロが出来る機種ならい
いが、そうでない場合は絞り開放付近ではまず撮れないので、絞り込むことになるがバックのボケ
具合をプレビュー・ボタンがあれば確認してバランスを取れば完璧だ。

次は私がよく使う前ボケだが、逆光で考えれば今の季節は新緑が美しいが、逆光に透けてとても鮮
やかで嫌みのない、いい色を出してくれる。それをレンズの直前にもってくれば最高の前ボケとな
る。

気を付けて頂きたいのは、芝生や草むらの真ん中にモデルを配しての撮影の場合は、その芝生がレ
フ板になってしまうのだ。撮影中は全く気が付かないが出来上がった写真を見るとモデルの顔が緑
色に染まっていることが多い。それを補うためにも白か銀のレフを当てたり、緑の補色に当たるマ
ゼンタのフィルターやアンバー系のフィルターを使うことになる。
同じように、曇りの日は太陽光線が雲に当たって反射しその上の青空にぶつかった光が地上に降り
て来るわけで、今度は青白い顔に写ってしまう。こんなケースも補正が必要になる。
実にややこしいもんや!

レフ板のことが出たが、「レフなんぞもっとらんわい!」とおっしゃる貴兄に・・・
さっきも少し触れたが、レフなんて無くてもモデルの下にある物がレフになり得るのであるから、
上手い具合に利用すればいいのである。Joe's galleyの"Shiomi"ちゃんの写真で
白いテーブルに寝転がっているカットが何枚かあると思うが、まさに白レフを真下から当てている
のと同じなのである。黒以外は何でも光を反射するのだから、使わない手はないのだ。
そう考えてみると白いクルマのボンネットも最高のレフだし、広角レンズでモデルに近づいて撮る
のであれば、淡いピンクのシャツを着るってのも効果が有りそうだ。

だから、何も考えないで撮るより、ちーっとは頭を使いなさいってことかな?


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