主役と脇役
写真には主役と脇役があるものだ。ドラマでも映画でも同じだが絶対に主役と脇役が存在する。
観光名所に行くと誰しも写真を撮りたがる。そしてカメラを構えファインダー越しに、ぐるっと見
回しあれも入れよう、あれもきれいだ・・・と風景の詰め合わせ状態が出来上がる。
そしてニンマリ、いいのが撮れてるハズ・・・? さて、そうだろうか・・・・
確かに、写真を撮ろうと思った瞬間は何かに感動したか、目に止まったからであろう。
しかし、出来上がった写真を見ると、その感動を引き起こしたそのモノの回りに色んなモノがひし
めき合っていて、結局何が撮りたかったの?ってことになってやしないか。
それでは、同じ所で撮った絵葉書やテレカを見ると、しっかり主役が幅を利かせているはずだ。
そんな欲張りな人は、山梨か静岡にいきましょう! そして富士山を撮りましょう!!
そこには日本一の主役がオッ立っているのだ。どんなにあがいても主役を食ってしまうような脇役
はいないのだ。そしてじっくり目移りせずにその主役を料理できるのだ。
そうなのだ、見る人にも目移りさせちゃいかんのですよ。
ポートレートの場合は富士山がおねーちゃんに置き換わるだけなのである。しかし、おねーちゃん
は生きている!あちこち動き回る!富士山とはそこが大きく違うのだ。
と、いうことはおねーちゃんがモデルとして主役のポートレートは色々な場所で撮ることができる
のであるが、ヘタすりゃ主役が食われる恐れも大いにあるのだ。
さて、どうする。一番の方法は主役のおねーちゃんをファインダーいっぱいに捕らえればいいのだ
が、そうとは分かっていてもなかなかできないものである。
せっかく植物園に来たのだから、あそこの赤い花の咲き乱れる花壇をバックにしよう、おっと、そ
の横の池には白鳥もいるぞ。と思わず主役を忘れてどんどんファインダーの中に押し込んでしまう。
そこで思い出して欲しい。ポートレートを撮りに来ているのだ。植物園の広告ではないのだと。
ポートレートに説明は要らない。何となく雰囲気が分かればそれで充分なのだ。そのためには大口
径レンズが必要となってくるである。ボケという武器を使う絶好のチャンス到来ってことだ。
いくらぼかせばいいとは言っても、美しくないものはぼけても美しくないのである。へんなモノが
写り込んだり、主役を邪魔するようなバックの写真を撮ってしまうのは、フットワークが足りない
のであって、カメラの向きやズームで逃れようなんて考えが甘い。
まず、光とバックを決めそれにマッチしたレンズを選択してそこにモデルをはめ込めばいいのだ。
そしてファインダーの隅々を見て余分なモノが入っていないか確認して、やっとシャッターが切れ
るのである。そしてその後は表情を追いながらバシャバシャと撮りきるのだ。
決して勝負を焦っちゃダメなのだ。