意図的表現とミス
写真には主役と脇役があると言い続けているが、何もかも平等に表現しようとすると、それは作品
では無くなる。卒業アルバムのクラス写真ではないのだから全員が主役にする必要はまったく無い。
あるものが目について主役にしようと決め、それを主役にするには色々な表現方法があろう。同じ
2次元の世界で動かない絵画と写真であるが、写真にはボケという武器がある。絵のことは詳しく
ないので決め付けることはできないが、ボケを使った表現はあまり記憶に無い。
大人気のHIRO YAMAGATA氏の絵を見ると遠くがモヤッて霞んだ表現はあるが、ボケを
使ってはいないようだ。そもそも氏の絵は写真で言うと広角レンズのパンフォーカスって感じで、
私の撮る風景はポートレートに近い表現で主役は一つで無駄な物は徹底排除の考えであるから、ま
ったく違うのであるが。
そういうことで、ボケ効果で主役を浮き上がらせる方法がる。もう一つは構図を工夫することによ
っても可能かと考えるが、露出の操作でも可能ではないかということだ。
簡単な例では、暗いバックを選んで、真っ黒にトーンを落としてしまえば、自ずと主役は浮き上が
ってくる。そのまた逆で真っ白にバックを飛ばしても同じ効果が得られるのである。
露出による表現方法と言うことから考えると、「適正露出とはいったいなんぞや?」ってことにな
る。実際、適正露出の定義なんてものは無いのだと思う。ネガを使っている場合はプリント段階で
補正されていることが多いので、ここでは考えていない。というかこの撮影雑記ではカラーについ
てはネガ・フィルムに関しては一切無視している。事実私は社員旅行や行事の写真を頼まれた時以
外はネガはまったく使用しないのだから、頭の中にはライトボックス上のポジのイメージしか浮か
んでいない。
従って、こと露出に関してはネガを使っている方には理解しづらい部分も多々あるはずである。
いかんせんラチチュード(露光可能な明るさ範囲)の幅が違うのであるから(当然ネガは広い)
話を本題に戻そう。
いきなりだが、露出オーバーとハイキー、露出アンダーとローキーは全くの別物である。結果とし
て同じ表現になったとしても同じ扱いをされたらハイキーやローキーに大変失礼だ。
私は露出云々というのは撮影時のミスであり、ハイキー、ローキーは表現方法として意図的に計算
された撮影技術であると認識して区別している。
但し、ハイキーとは写真全体が明るいトーンでまとめられているもので、ローキーはその逆ので全
体が暗い場合である。だから、バックが暗ければ主役のモデルの顔をいくらオーバー目に撮っても
それはハイキーとは言わない。また、その逆もしかり。
最近私は、かなり露出をオーバー目にかけて肌の調子が飛んでしまう直前の描写に凝っている。
ただ、なぜかというと明確な理由はない。ただ、オンナの子の場合はそれが結構きれいに見えたり
するからだ。モデルの宣材写真などはよくこの技法が使われていて、騙されることがある。いや騙
しているのだ。この写真のコツは思い切ってプラスの補正をかけることである。しかし、飛ばしす
ぎて真っ白になってしまうと、完全に失敗である。ほんの少しでも肌色を残すのがポイントである。
逆にローキーな表現にも挑戦したいのだが、あまりすることはない。その理由は最近は撮った写真
はフィルムスキャナーを通して、デジタル画像とすることが多いのだが、ローキーな写真に弱いと
いう弱点を持っている。どうもシャドウ部分の再現性が悪く、ノイズが乗ったりすることも多いの
でやる気がしないだけである。最近発売されたNikonのLS−2000いうやつが凄いらしい。
しかし、1年間でフィルムスキャナーを3台も乗り換えてしまった私としては、ここはじっと我慢
の子でいるしかない。しかし、せっかくいいレンズを揃えても、スキャナーがボロければ台無しで
あることを考えると・・・・ いやいや、今のは忘れよう・・・
しかし、シルエットにしてしまう手法もなかなか面白く、挑戦のし甲斐があってこれもまた、真っ
黒にしてしまうのは簡単なことだが、バックとのバランスを取りながら微妙にトーンを残すのが、
これまた難しい。
私は、露出を極める上で、標準的なある程度の幅のある露出ではなく、崖っぷちの一歩まちがえれ
ばあの世行きってところでの、微妙な露出のコントロールに快感を得ているのである。
しかし、そこまで突き詰めていくときりがないのも事実であり・・・例えば中央でファインスポッ
ト測光するか、単体露出計で測光して、その値から露出をはじき出した場合、モデルの顔がフレー
ムの端っこにあれば周辺光量の低下分を考慮して・・・ あぁ、頭が回らん・・・
でも、段階露出はせず、一発勝負でやっている。すぐに甘えが出る都合のいい性格なもので・・・
しかし、依頼されて撮る時は、保険のつもりで段階露出に・・・
最後に言いたいのは、主役だけの露出を計って撮るのではなく、脇役となるバックの露出も確認し
て欲しい。脇役はないがしろにしてもいいってことは決してない。中途半端になってしまわないよ
うにスポット測光であちこち計り回るのだ。
要は、フレーミングした全体をトータルで見た露出をはじき出すようにしたいものだ。