脚立の有効利用


ポートレート撮影の時に「あったら便利」なのが脚立である。私は出来るだけ持って行きたいのだ
が無ければ無いで、特に不都合を感じることも無いので、最近はちょっと手を抜いてしまうことが
多い。
しかし、大きな撮影会に行けば必ず何人かは、大袈裟に脚立を担いでやってくるひとがいる。私も
その一人であった。
185cmある大男になぜ脚立がいるのか?と思われるかも知れないが、サンニッパで狙ったりす
る時は脚立が無いと人の頭がフレームに入り込んでしまうし、とにかく大人数でのサバイバルには
脚立があると大きな武器となる。
背伸びをして撮っている人を見かけるが、絶対にブレているはずだ。そんな苦労をするのなら脚立
を持ち歩く方が断然楽だ。疲れたら座ることもできるのだ。私は不要なカメラのストラップを脚立
に付けて肩から提げられるようにしている。
ホームセンターに行けば、数千円で手に入るので一番低いやつを買っても損はしない。日曜大工に
も使えるのだから。

この脚立は、邪魔な人の頭を避けるためだけに使うのではない。もっと写真の幅を広げるために使
えと言いたいのである。

一番簡単なパターンはG馬場の目線になることだ。これは絶対に一般人では経験できない目線の高
さである。子供の頃に肩車をしてもらった時の感動をもう一度!ってところか。実際に脚立の上に
立ってみると意外に高いのでそこからモデルに声を掛けるのであるが、その前に出来るだけ目立つ
ように脚立の上に立つと、自然にモデルの注目を浴びることになる「落ちないで下さいねぇ!」っ
て声を掛けてくれることも多いのだ。できればそこを狙ってみたいところだ。
構えたポーズよりグッと自然でかわいい表情が撮れるはず。上を向いた表情は元々かわいく見える
のだから。
これに関しては、特に脚立ではなくてもよいのだ。一番手軽で効率が良いので便利なのだが、塀や
木に登ってもいいし、とにかくカメラアイを常に工夫したいものである。

中級編としては、バックとモデルの位置合わせに使うのである。それは、バックにきれいな桜が咲
いるのだが、モデルよりずっと上の方に形のいい枝があった場合は、モデルに脚立の上に登っても
らうのだ。そしてちょうどいい位置に脇役である桜の花を持ってくる。主役の方から脇役に近づい
てもらおうってことである。これはコロンブスの卵的な発想であるが、なかなか使えるし、この技
を持っていれば、撮影場所もかなり有効利用できるのである。
モデルとしては、かなり不安定な体勢になるし、ポーズも限定されるが腰から上の構図では問題な
いはずだ。

次は上級編と行こう。池や川の水に紅葉が写り込んだりしてきれいな場合に、どうしてもその水を
バックにしたいケースがある。その時、水際ギリギリにモデルに行ってもらうのだが、どうしても
もう一歩踏み込みたい場合がある。その時に脚立を思い切って水の中に突っ込んでしまうのだ。
そうしてそこに片足を乗せたり座ってもらって、水の上までモデルに踏み込んでもらうのである。
かなり怖がるが、結構やってくれるのである。そんなモデルさんには感謝!感謝!

オマケとしては、無造作に置いた脚立に腰掛けてもらうのも、なかなかイケルのだ。変にわざとら
しく洒落た椅子を持って来るよりよかったりする。しかし、本格的なポートレートというよりは、
遊び心のあるスナップ・ポートレートって感じであるが、作品の中のアクセントとしては効果があ
るようだ。但し、あまり堅苦しいポーズではなくリラックスした感じが伝われば成功か・・・。


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