いいモデルにゃかなわない


この撮影雑記を振り返ってみると、いつのまにかテクニック講座のようになってしまった。しかし、
これはあくまで私のつたない写真経験を基に書いただけで間違いもあるだろうし、視野が狭い部分
も当然あると思う、特にポートレート撮影をベースに書いているのであるから、偏った内容にもな
っていると思う。
本来の撮影雑記は、このような内容になる予定ではなかったような・・・・

きょうは、昨日(6/7)に兵庫県のハウス・スタジオで行った、第17回SPGヌード撮影会のことを
書いてみようか。
なぜ書く気になったかは、読んでもらえればおのずと分かるってもんだ。

モデルとして来た中の一人である“まなちゃん”は私が今まで出会ったモデルの中でもBest3
に数えられる。
最初に見た時は背がすらっと高く、プロポーションがいいモデルさんというイメージだけであった。
しかし、朝一発目は服を着た状態で撮り出したのであるが、EF135mmF2L USMを通し
てファインダーに現れたまなちゃんは、息を呑むとはこのことをいうのではないか。
急に美人になったわけではない。物静かな表情なのだが常に何かを語っているのである。目線の泳
がせ方が絶品であり、顔を動かして後から遅れて目線が流れるとでも表現するべきであろうか。
ファインダーをのぞいて、ものの10秒もかからないうちにこの子はただ者ではないと分かった。

物悲しいようで、知的であり、鋭くも見え、また優し気でもある。レフを当てるとキラキラと輝く
こんな目は、ちょっとお目にかかれないものである。単に可愛いとか奇麗とかの俗っぽい言葉で処
理したくはない。
一度、下を向いているまなちゃんに、椅子の上から大きな声で、「まなちゃん!!ホラッこっち」
と呼んでみた。普通のモデルならハッと驚いたように目を丸くして見てくれるのだが、まなちゃん
は、あたかもそれを予測していたかのごとく、落ち着いて自分のペースを崩さなかった。インハイ
のストレートを悠然と見逃された投手の気分とでも言おうか。

私は普段、軽く話す程度でかなり静かにシャッターを切るタイプであるが、まなちゃんのいい表情
を引き出すために昨日は、ワンシャッター毎に声をかけるようにした。そして緊張感が途切れない
ようにした。
かなり近くまで寄ってバストアップを多く狙ったが、オール・ヌードであるにもかかわらず、私は
神経をまなちゃんの目だけに集中させた。ワンポーズで5カットほどシャッターを声をかけながら
連続して切るのであるが「よっしゃぁ!、ハイッ!、もういっちょ!、ぐうっと!、おっけぇー!」
っと、1秒刻みのシャッターであるが、そのすべての目が微妙に違うのだ。
ほんのコンマ何ミリまぶたを動かしたりしているだけなのかも知れないが、ワンシャッター毎にど
んどんいい目になって行き、語りかけてくるようであった。潤んだ目になっているのは、まばたき
を我慢してくれているからだとわかっているが、それがまたいいのである。だから、表情を追いか
ける時は声をかけて、ワンシャッターで終わらせてはいけないということが途中で分かってきた。

まなちゃんは、表情もさる事ながらプロポーションがとても良いのだが、どんなポーズをしても破
綻がなく、バランスがとてもいいのである。全身がどう見えているのかが分かっているようだ。
絶対に棒立ちになってしまうことも無い。仮にそうなったとしても真っ直ぐに伸びた脚で絵になっ
てしまうのだ。
私は、手や足の指先が結構気になるのだが、力が抜けた感じで自然に伸びやかに見せてくれるのも
感心した。頭の回転の良い子だとは聞いていたが、その辺りに充分それが感じられた。
また、私は光と影の境目が好きであり出来るだけそんな場所を探して、セッティングするのである
が、その意図もしっかり把握してくれているように思え、カンの良さも持ちあわせているようだ。

涼しい顔をしてポーズを作ってくれるのであるが、脇の下に滴るほどの汗をかいていたので、何度
かタオルを渡したが、懸命にモデルの仕事をしているのが伝わっても来たのだ。最初は天性のもの
かと思っていたのであるが、それは頑張っているまなちゃんに失礼だと知った。

後で聞いた事だが、メイク室でのまなちゃんの姿を目撃した方の話では、鏡の前で休憩中も次の撮
影で身につける小道具の使い方を研究というか、イメージトレーニングのようなことをしていたら
しいのだ。ますます、やられたって感じである。まなちゃんを撮る時には軽い気持ちで挑むわけに
はいかないとは思っていたが・・・

今回はヌード撮影ということなのだが、良い表情を引き出したり、プロポーションが引き立つポー
ズや角度を探すのが楽しくて、ヌード撮影としては終始ソフト路線を貫いてしまった。
こんな良い素材を前にして・・・ しかし、私の中では大事に扱いたいという意識が常に働いていた
のである。何がどうすれば大事なのかは漠然としているのだが、昨日はそんな気分だった。
ずっと服を着ていても、良かったと思うほどだ。逆に服を着ている方が、あぐらをかいたり男っぽ
い大胆なポーズをしてもらいやすいということもあるのだ。


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