ポートレートは写真集ではない


いいモデルに出会った時、いろんなバリエーションを撮って可能性を探し、また見る人の目を楽し
ませるべきか、いいと思った表情(ポーズ)をとことん追求し、もっと奥の奥から滲み出るような
何かを引き出す努力をするべきなのか・・・・。

今度、まなちゃんを撮っていて、ふと感じたのである。前者はモデルがよくて、技術さえしっかり
しているのであれば、そこそこの写真が撮れるであろう。後者はその何かが撮れれば、 何事にも
代え難いモノになるだろうし、満足感も大きいと思うのである。しかし、最終的にその何かが引き
出せずに終わった場合は、つまらないモノになってしまう恐れがある。ハイリスク・ハイリターン
ってやつか。
後に残る一枚を撮りたいと思えば、後者であるはずだ。偶然撮れたのではなく、自ら勝ち撮ったの
であるから、記憶にも残るはずだ。

だが、陥りやすい罠もあり、最高の一枚だとピックアップした写真は本当にそうなのか?なのだ。
それは、良い表情を選ぶことになるが、撮った一枚一枚をチェックしている時は、当然その時の記
憶が蘇るのであるが、その時の気分の高ぶりまでオーバーラップすることがある。確かにシャッタ
ーを切った瞬間はモデルと息が合っていたはずだが、主観的な感情でベスト・ショットを選んでし
まうのは、考え物かもしれない。対モデルの間の空気まで第三者に伝わるか?といえば疑問符がつ
くかもしれない。
何日かして再チェックすると、前回は候補にもあがらなかったカットがすごく良かったりする。

私は、そのハイリスク・ハイリターンのパターンに近い撮影をすることが、非常に多いのである。
だから、表情を追いかけて撮った場合は、一枚もフルショットが無い、なんてこともある。
見る側に立てば、つまらないであろうと想像はつくのであるが、ポートレート(肖像写真)を撮る
という観点から言えば、あながち私の選択は間違いでもないのでは・・・・

ここのJoe's galleryはポートレート・ギャラリーであり、おねーちゃんのプロフィールを見せる
場ではないのである。肖像写真とアイドルの写真集は全く違うのではないか。
写真集の場合は、そのアイドルや女優の色んな面を見たいと思うし、アップも見たけりゃ、フルシ
ョットも見たい。
衣装も、色々変えてもらいたいと思う。同じような写真が並んでいても面白くないのは当然である。
その点、私は多くのバリエーションを満足いくまで撮るほどの時間的余裕も無いし、金も無い。
ほんの、1,2時間で満足のいく写真があらゆるシチェーションで揃えられるほど、器用ではないの
ないないづくしである。
そりゃ、一週間海外にでも行かせてくれて、数百本のフィルムを湯水のごとく使わせてくれるのな
ら、やってやろうじゃないの!って気にもなるが。
結局、ハンパな写真の大量生産は好きではないのだ。
例えば、バストアップで顔中心に撮って、次にそのまま後ろに下がってフルショットってのは都合
が良すぎるわけで、バックの選び方もモデルに当たる光の加減も全く違ってくるのだから、上手く
いく訳ないのである。

細かい部分まで気になりだすときりがないのだが、妥協しての撮影はファインダー内で、その事が
気になってしまい、モデルに集中できないことがある。
そう、私は見かけによらず神経質だったのだ。しかし、そんなイライラをモデルに悟れれるような
ヘマはしていないつもりだが。

表情狙いでカットを刻んでいく時は、短期集中型でいかないとモデルもこちらも疲れてしまう。
モデルも一度流れが切れると、またテンションをすぐに上げられるモノではない。また撮り手の方
も一旦ファインダーの中のモデルの目から注意が離れると、リズムが狂い軌道修正が難しくなる。
せっかく、モデルが良い表情を送ってくれているのであるから、それをミスなくカメラに収めなけ
ればいけない。


<−戻る