自然の力を借りよう
私は、屋内撮影より、外に出て撮る方が好きである。
それは、自然光での撮影が好きだからってのもあるが、外に出れば最高のスタジオが無限にあるの
だから、それを使わない手は無い。
本当に自然のままの場所も郊外に行けばいくらでもあり、四季まで用意されているのだから、文句
のつけようがないではないか。
都心でも、アーバン・ポートレートでお洒落に撮ることだって出来る。
一つだけ天気に左右されるってことはあるが、台風でも来ない限り撮影は可能だ。それよりスタジ
オの使用時間や金額を気にしながら撮るよりずっとマシ!
私は時間に追われるのは一番嫌いなのである。
それと、スタジオではお金をかければかけるほど、有利である。それは絶対に言える事で、ライテ
ィングなんかは典型的であるし、セットなんかも同じこと。その点、屋外であれば、太陽と言うメ
インの一灯を如何に上手く使うかは、一流プロも初心者も同じ土俵での勝負となる。
海外に行こうが近くの公園に行くかの違いはあっても、それは大した問題ではないと思う。
私だって、手近な須磨海岸で撮って海外ロケの重要性はそれほど感じていない。要は撮り方でいく
らでもカバー出来るってことだ。私はヌード撮影をしたい人ではないので、国内の都会のど真ん中
で何も問題もない。
だからと言って、ロケーションにこだわらない訳では決してない。それどころか、一番それで頭を
使っているのだ。だから、いいらしいから行ってみようか・・・ なんてことはあまりしない。
事前に可能であればロケハンをするし、遠方であればそこで撮られた写真を何枚も探してじっくり
見、下調べを充分にやっている。実際に撮影した事のある人から情報を提供してもらうこともやっ
ている。 行った事のある人からの情報が確かである。ただし、写真を撮りに行った人でないと、
あまり意味がなかったりする。行ってみたらバックが汚かったりしてね。
さて、今日言いたいのは『自然の力を借りよう』ってことなんだけど、外に出ればまず最初に感じ
るのが、天気であり、気温だが、これはその日の撮影のベースとなるファクターである。説明の必
要は無いハズであるが、それによって、撮影場所、衣装、天気に関係してなら使用フィルムとレン
ズなども変わってくる。
私が、特に気を使っているのは、太陽光線の反射である。これは風景写真を撮っていて気づいたこ
とだが、この反射がボケた時が美しいのだ。木々の葉に反射したものでもいいし、海や湖なら、波
立った水面に反射する光は最高の演出となる。海などをバックにする時は海のある方角は変えよう
がないので、ベストの時間を待つ事も重要である。必ず奇麗にキラキラ光る時間帯があるのだ。
先ほど出た、波立った水面であるがここには私の好きなモノの大きなヒントが隠されているのだ。
何故波立つのか?それは風があるからに他ならない。そう、風が無ければ水面は鏡のようにまっ平
らであり、キラキラ輝く事もなく、モデルに悪戯する波もやってこないのである。
この風が私は大好きだ! 自然な風ほど女性ポートレートで効果的に働くものも無いと思っている。
T.M.Revolutionのヅラなら吹き飛びそうな風はちょっとやり過ぎって感じだが。
だから、程よい風が吹く時は、その風向きも考えて撮る角度も決める。扇風機と人工灯では絶対に
得られないと信じている。
私は、風が効果的に吹いてきたら「いい風が吹いてきた!」ってモデルに言うようにしている。
そうする事で、モデルもその風で流れる髪をうっとうしいと思う事も無くなり、今からシャッター
切るんだな・・・ってことが分かるのか表情がさらに良くなってくる場合が多いのだ。
また、扇風機と違って同じシーンのやり直しが出来るとは限らないのが、またいいのでる。
風や波をハプニングと取るか、ラッキーと考えるかがキーポイントなのかなぁ・・・?
ということで、波打ち際での撮影はこの要素がそろってしまうのである。こんな最高のロケーショ
ンで傑作をモノにしないのはもったいない話である。最近少し肌寒く感じる季節となってしまった
が、私が撮った9月中旬は一年間で最高の撮影時期であると思っている。日本人と言うのは変わっ
た生き物で、時期はずれを極端に嫌うのである。だが先取りは大好きときている。だから海水浴シ
ーズンの始まる夏休み前には大勢の人がいるが、まだ30度を越えている9月になれば海から人が
消えてしまうのだ。しかし、まだ充分に水温は高く水に浸かっても寒くはない。その隙をついての
撮影なのだが、都心に程近い海岸だと思えないような好条件となった。
それに、太陽と海と空と風と最高のモデルがそろったのだから・・・