『素顔のままで』第四弾


10/17は以前から予定していた島でのロケの日であったが、あいにくの台風で延期し、まなち
ゃんの部屋での撮影となった。
だからと言って、別に仕方が無いから部屋ででも撮ろうか・・・ってな感じではまったく無いのだ。
それは、第一弾を撮った頃からのプランであり、まなちゃんにはイメージを伝えていたことである
し、じっくり寝かしていたものであり、決してピンチヒッターではない。
また、その時に伝えたイメージが今回の天気のような薄暗い雰囲気であり、ぴったりと言えなくも
無い条件なのだ。

撮影前夜、早く寝ろと言っているのに、まなちゃんから2時過ぎにメールが来て「いい感じだよ」
って伝えてきた。こんな時間まで買ってきた下着を着て、メイクをしたりウイッグつけてヘアーを
いじったりしてたようである。
いつものように、イメージを膨らませてくれているので、こちらも気合が入るってもんだ。

まなちゃんは、以前からメイクが好きだと言っていたし、ブラック系のメイクを見せてくれそうで
あった。と言う事は、私も急遽買って来た色出し用のタングステンのスタンドと、500Wのフラ
ッド一灯での撮影で行く事にした。
窓の外が薄暗いのに明々と照明を付ける気はしなかった。雨の昼下がりから夜の雰囲気が出せれば
いいと思っていたのである。
そのイメージがまなちゃんのイメージと一致しているかが、問題なのであるが。
先ほど仕上がったポジを見たが、私としては抱いていたイメージ通りどころか、それを超えるほど
の雰囲気が出せたと思っている。
撮影中のまなちゃんの表情からも、そのような感じを受けたのでいつものように、ハイキー調に振
るような露出とは正反対のどちらかと言えばローキーなスタイルが今回のメインである。

まずはベットの上でくつろぐまなちゃんであるが、外は台風接近で雨模様であり窓から日が射すこ
とは無い。それでランプを窓枠に取り付けて、疑似的に軽く日が射し込んでいるような雰囲気にし
た。そこで一通り撮って、「じゃぁ、チェンジしようか!」と私が言うと、嬉しそうにまなちゃん
はメイクをしに奥の部屋に走って行ったのである。

私の今までの作風を知っている人の目には、以外に見えるかも知れない。また、六甲アイランドで
ボール遊びをしていた、まなちゃんと同一人物とは思えないかもしれない。
私は、まなちゃんがメイクをし、くりくりスパイラルのウイッグを付けている間、その変貌振りに
驚きながらも、まなちゃんが表現したがっているイメージを探っていたのだ。またそうしながらラ
イティングをあれこれと考えていた。

基本的にはアンダー目であるが、大きな姿見を置き、そこにタングステン照明を写しこんだりして、
画面が単調になるのを避けたつもりである。また、フローリングの床の向こうの薄暗い窓までの空
間も考えたつもりなのだが、うまく行ったあろうか。元々スタジオではないので、それほど撮影場
所が確保出来るわけでは無い。基本的には2ヶ所しか使っていないのである。
もう一つはベットの上と言う事になるが、そこでも今回は明るいイメージでは撮っていない。

今回は特にまなちゃんの瞳に映り込むキャッチライトが印象的でもあった。元々まなちゃんの目は
潤んでいるのだが、それが一段と引き立って見えた。

フィルムはデイライトとタングステンを使っているが、デイライトフィルムでも積極的にタングス
テンのスタンドの光をスポット的に当てている。青みが強い人工照明に赤みがかった色が効果的に
思えたし、立体感も出せたのではないか。
下着の上に黒いコートを羽織ったポーズも単なるモノトーンにはしたくなかったのである。

今回は、ほとんどすべての撮影で50mmF1.4を使用している。広角レンズも敢えて使用を控
えた。また、絞りも開放に近い部分を使って、シャープな部分とボケた部分をはっきり出したつも
りである。

最近気づいたのであるが、撮影中にまなちゃんといろいろ会話をしているのであるが、まなちゃん
が完全にイメージの中に入りこんでしまった時には、具体的な話はしてはいけないのである。
そんな時に話し掛けてしまうと、素に戻ってしまう場合があるのだ。だから話す内容が重要になっ
てくる。素に戻っても、またすぐにイメージの中の自分に帰って行くのだが、それを邪魔しないよ
うな、更にはその助けとなるような声を掛けてあげる事が大事になってくるのだ。
だから、私としては完全に醒めた状態で冷静に判断して、まなちゃんに協力してあげるか、または
同じイメージを持つようにしなければならない。中途半端はコミュニケーションは却ってマイナス
なのである。

最後に、今回のような露出を切りつめた撮影に踏み切らせたのには、大きな理由がもう一つあるの
だ。それはNikon LS−2000というフィルムスキャナーの存在である。
これ以外のスキャナーを3台使ってきたが、シャドウ部分の再現性が悪かったので、今まで避けて
きたという、経緯があるのだ。私はハイキー調が好みだと思われている方々もいたであろうが、そ
うでもないのである。

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