動きの中のヒトコマ


私の撮影では、完全にモデルが静止してポーズをとり、カメラに目線を向ける向けないに関係なく
止まった状態で撮る場合と、ポーズはある程度決めて、そこから、顔や身体を動かしている段階で
シャッターを切る場合がある。

まなちゃんとの撮影では、この動きの中からいい表情を拾っていくような撮り方が多い。そのよう
な場合では、私が指示して動いてもらうことより、まなちゃんの判断で動いてくれる。
その時はコマ送りのような感じでポーズを意識して動いているわけではない。私は、ずーっと連続
して動いているまなちゃんを、追い続けて私の感覚でシャッターを切っているのだ。
そのシャッター音と、私が掛ける声でまなちゃんはリズムを出しているのかな。
時には、いいと思った所で止めて、その状態をキープしてもらったり、それをベースにバリエーシ
ョンを出していく場合もある。しかし、基本的にはまなちゃんにお任せであることが多いのだ。

連続して動きがある場合は、いい表情だと感じた瞬間にシャッターを切る必要があるが、静止して
いるわけではないので、はっきりと確認してから撮る体勢を整える事など出来ないし、極端な場合
表情もはっきり確認せずに撮ることすらある。しかし、それはいい加減に撮っているわけではなく、
私としても動きの中で表情を追いつつ、次の表情を予測しているのだ。それが、まなちゃんに関し
ては、ある程度出来るようになってきた。

こんな感じであるが、目線を外したカットも、まなちゃんは突然そっぽを向くような事はなくて、
ごく自然な動きなのだ。モデルとカメラマンがそれぞれ勝手にやってるということだけは、無くし
たいと思っているが、実際に間にカメラがあることを感じさせないほど必然的な流れであり、まっ
たくトリッキーな動きなど有り得ない。だから私もまなちゃんの動きが読めるのだが、決してワン
パターンであると言う意味ではないのだ。

毎回、撮るたびに新しい発見をさせてくれて、奥の深さに感心するのだが、最近は徐々にその表情
を撮り逃すことが少なくなってきた。それは、先に書いたように予測して準備が出来ているからで
ある。その辺の呼吸がうまく行くとお互い気持ちがいいもんだ。

そのように私に予測がつくのは、まなちゃんが自分のリズムを持っているからで、言い換えれば、
マナ流の“型”がきっちりと出来上がっているからだとも言える。それを私は崩そうとは思わない
し、それによっていい結果が出るとは言えないからである。
昨日も書いたが、途中であまり話し掛けないのもその考えに基づいている。

最初にまなちゃんを撮った時に、それまで撮ってきた多くのモデル達と同じようにして、私のペー
スに引き込もうとしたのである。その時は今のようにマンツーマンの個人撮影ではなかったが、突
然意外な所から「まなちゃん、こっち！」と声を掛けて、ハッとした瞬間から逃さずに撮ろうとし
たのだが、いともあっさりとかわされてしまったのだ。まったく慌てることもなく、それどころか
こちらを焦らすかのごとくゆっくりと涼しい顔をしてレンズを見つめたのだ。こんなモデルは後に
も先にも、まなちゃんだけである。
その時のことを当時の撮影雑記では「のけぞらすために投じた、インハイの球を悠然と見逃された
投手の気分」と書いた記憶がある。
これは、いくら自分で言い聞かせていても、咄嗟にに出来ることではなく、つい反応してしまうの
が普通だと思うのだが、彼女には通用しなかった。
それだけ、マナ流の“型”の中で集中している証拠でもある。
個人撮影ともなれば、それが一層強いのだと思う。

しかし、『素顔のままで』でのまなちゃんは、目の前の相手は私だけであるから、それを含めた上
でのマナ流の“型”を作り上げたようである。だから、私が的外れの指示や声を掛ける事さえしな
ければ、実に忠実で撮りやすいモデルとなってくれる。そのために私もまなちゃんがモデルである
場合の“型”が身についたという事かもしれない。

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