モデル確保の薦め
私は、ここ一年モデルを絞り込んだ撮影をやっているが、そのカタチを定着させてくれたのは、紛
れも無く水谷愛との出会いである。そのまなちゃんと上手くやって行けてなければ、今の私のスタ
イルは出来ていなかったと言える。
まなちゃんと『素顔のままで』のシリーズをスタートした段階から、仕事抜きでのモデルとして、
撮影をすることになっていた。私としても、まなちゃんのモデルとしての技量は充分承知していた
ので、2回目以降は事前に撮影のプランを伝えて、彼女もそれを楽しみながらやってくれているの
である。
こうやって、十数回にわたって続けられているのは、何故か? その部分が重要なのである。
私とまなちゃんは、住んでいるところが近所どころか、今は250km離れているし、何の金銭的
な利害関係もない。当然ながら彼女でもないわけだ。だからと言って撮影の時だけ顔を合わすよう
な淋しい関係でもない。
また、恋愛関係が介入しないから、安定した仲良し状態が続けられるわけで、相手の奥深くまで立
ち入ろうとはしないし、束縛することもあり得ない。そんな関係でも、信頼されればプライベート
な悩みでも勝手に相談してくれたりするものである。
いくら、彼女でなくても、私にとっては可愛いくて仕方のない存在であるから、いつもまなちゃん
の見方であることに変わりはない。
こうやって、モデルの女性を好きでいることがメンタルな部分で最高の秘訣であるわけで、最高の
シャッタータイミングをもたらしてくれると信じている。
「どこの誰が嫌いなモデルを撮るものか!」と言う人がいるかもしれないが、私達ほどのチームワ
ークを実現している例は、他に見たことも聞いたことも無い。
その結果としての写真を、評価してもらえるのは嬉しいのだが、その喜びは普通のカメラマンとは
違うと私は思えるのである。それは、写真の感想などをBBSやメールで貰った場合、カメラマン
としてだけではなく、まなちゃんサイドの身になって素直に喜べてしまうのである。
それは、モデルをオブジェ的に扱うようなポートレートが好きではなく、その時に目の前にいるモ
デルの女の子でなければ、この写真は意味が無いと思って撮っている私としては、私が選んだモデ
ルが魅力的であるという意味の賛辞と受け止めているのだ。また、そのように私自身が感じた瞬間
にシャッターを切っている。
こんな風だから、撮影が続けられるのは自然なことであって、それが出来ないのは、嫌われてるか
写真がよっぽどヘボいかのどちらかだ。
あと、付け加えるとすれば、私はモデルの女の子に対して単なる被写体だけにとどまらず、一緒に
作って行く写真という意識を持ってもらうことにしている。それは、私が楽しているわけでもなん
でもないのだ。
待ち合わせ場所で落ち合って、どんな撮影かも知らされていないモデルを勝手に撮る方がよっぽど
楽だし、手抜きもできる。
次は、こんなシチュエーションを用意して、どんな雰囲気で撮影するかを事前に伝えることで、モ
デルとしては少なくとも心の準備は出来るだろうし、多少なりともイメージが目に浮かぶはずであ
る。まぁ、その程度のことも出来ないようでは、モデルはやっていないはずだ。
そんな感じで、モデルと事前にコミュニケーションを取ることで、私自身もいい加減な撮影は出来
なくなるのである。
私が現在撮影している二人のモデルは揃いも揃って協力的であり、撮影場所のロケハンはしてくれ
るし、ファッションやメイクを楽しんでやってくれるのである。
こうやって上手く噛み合っているが、そのような雰囲気を作ることがカメラマンの大きな役割であ
ると思っているのだ。
大きなスタジオを借りて、衣装を用意してあげれば文句ないだろうと思っているようなカメラマン
には、味わえないことであろう。
私との撮影でモデルとしての自信がついたと二人に言われ、楽しそうにカメラの前に立ってくれて
いるのを見ると、私の考えは間違っていなかったと思うのだ。
おっと、今i−MODEメールが届いた。読んで見るとタレント志望の女の子からの撮影依頼だ。
どうもJoe's Galleryを見てくれてメールしてくれたようであるが、私は今の対モデル
のスタンスとしてこれ以上増やすつもりはないのだ。
一度きりの撮影でよければ物理的には無理ではないが、撮るとなれば仲良くなれるのが大前提であ
り、一度撮って「ハイさようなら」とはいかないのである。せっかく縁があって撮影したのであれ
ば、もっといい表情を撮ってやりたいと思ってしまうので、二度、三度と撮らなければ気が済まな
くなるのが目に見えている。
であるから、今のまなちゃんとゆみちゃんという、タイプの違う二人のモデルを撮り続けられるこ
とで私は充分満足なのである。