同じモデルを撮り続ける訳


私は、多くのモデルを片っ端から撮っていた時期があった。プロのモデルでも仲良くなって撮る機
会があったにもかかわらず、回を重ねて撮り続けるようなこともそれほどなかった。
しかし、そのような時期も今となっては役に立っているように思える。
現在は、まなちゃんと、ゆみちゃん二人を撮っているが、まなちゃんは一年を超えてコンスタント
に撮影を続けている。

多くのモデルを見てきたが、ポートレートを初めて撮ったフジフィルム主催の撮影会で、プロのモ
デルを見て素人モデルとの差に驚き、それは美しさと言うより撮りやすさだろうか。
それも、徐々に慣れるに従って、いくらベッピンでプロモデルであってもつまらないモデルが多い
ことに気付きだし、所詮、複数のカメラマンを相手にしたモデルを撮っていることで、どこか虚し
く歯痒い想いが積もりはじめたのだ。
そうこうしているうちに、何人かのモデルと親しくなれたりして、他のカメラマンをそれほど気に
せずに、モデルとコミュニケーションがとれ撮影会でも自分のペースで撮影を進められるようにも
なってきた。そんなふうになれても、人間欲深いもので現状では満足できなくなってくるものだ。

そんな時期に出会ったのが、今のパートナーのまなちゃんである。彼女ほどもう一度撮りたいと思
わせたモデルはいなかったのだが、時期的にもいいタイミングで出会えたと思うのである。
さらに、お互い同じ想いでいたこともあって、すんなりと今のような状態になっている。

最初にまなちゃんを撮影した時に、個人撮影のパートナーになる予感があったのである。
これは、嘘でもハッタリでもなく、実際に何人かにそう話した記憶があり、私がそのような事を言
ったのは初めてだったので、「よっぽど気に入ったんだねぇ」と言われたものだ。
しかし、実際に実現させるとは、誰も思っていなかったようである。

当時、同世代でDTPの会社を独立して興していた女性と、よく写真の話をしていたのだが、まな
ちゃんと個人撮影をスタートする直前の写真を見て、「Joeさんがまなちゃんにのまれているよ
うに感じるし、沙紀ちゃんの写真の方がJoeさんの写真ダって思う」と言われたのだ。
少々メジャーなモデルを目の前にしても、自分のペースを乱されることが無くなっていた私である
が、確かにまなちゃんは違っていたと認める部分はある。まぁ、そうでなければ、これほどホレ込
むこともなかったであろう。
しかし、個人撮影がはじまればそんな意見は吹き飛ばしてやると思っており、『素顔のままで』が
スタートしたわけだ。

『素顔のままで』も12回を数え、その他の撮影も含めて一年間以上まなちゃんを見つめてきたが、
基本的な部分は変わらないものの、それを包んでいるベールを徐々に取り除いていけたと思ってい
る。まなちゃんも、カメラマンと二人っきりの撮影に、最初は戸惑いを見せていたが、撮影会では
絶対に見せない表情をしてれたのである。それが自然に出来たことが、『素顔のままで』のタイト
ルにもなっていて、その後も続けることができている大きな要因でもあり、励みになった。

私の場合は、撮影する時間だけ一緒にいるわけではない。撮影会ではないので、撮影場所での現地
集合で現地解散なんてことはないし、撮影が終わると食事もすれば、撮影抜きで過ごす時間も多い。
そんな時間を持つことは「Joeさんと一緒の時は、モデルでいなきゃ・・・」というような意識
を薄れさせることにもつながったと思うのである。
このようにリラックスしてもらうことが出来たが、それが撮影の時にモデルとしての気の緩みに結
びついたことは一度もないし、私もだらけた撮影をしてしまうことはない。

まなちゃんを撮り続けて、一人のモデルでこんなにも多くの表情を引き出せることが分かった。
それは、モデルに恵まれていることは百も承知だが、ほんの少しは私の努力の甲斐もあったと思っ
ている。それよりなにより、まなちゃんがいい女になっていく様を見るのは楽しい。
また、彼女が広島に引っ越したにもかかわらず続けられているのは、お互いネット環境をもってお
り、それに加えて私がデジタル画像を作ることができたことも大きく関係していると思っている。

カメラマンは、撮影の過程を楽しむのと同様に仕上がった写真を見ることが最大の楽しみであり、
その仕上がりに一喜一憂するわけだ。
モデルだって同じであるはずで、撮られっぱなしではモデルをした甲斐も無いってものだ。
それも、撮影時のイメージが頭に残っている内に写真が見れる事は、新鮮な楽しみであったはず。
モデルは写真を撮られるのが役目であるが、その撮影された写真を見る機会は意外と少ない。
その点、私との撮影では撮影後間もなく、時系列で多くのカットがデジタル化されて、メールで送
られて来るのだから、モデルとしてはそれも楽しみとなる。また、自分で「あの時こうしたのが、
こんな写真になったのか・・・」と改めてモデルとしての勉強にもなるようだ。

特に、私は光の当たり具合や質などを説明しながら撮る事も多く、まなちゃんも自然と学習能力が
働いて、どんどん上手いモデルになるし、ポーズや表情も工夫することができるのだ。
それをまた見てを繰り返して「次はどうしようかなぁ・・・」ってことになる。
だから、私はHPで公開するよりも早く、大量にスキャンしてまなちゃんにせっせと送っているの
である。その後『素顔のままで』で公開するカットを選んでアップするので、公開が遅くなってし
まうのだ。
私にとっては、ネット上での公開よりも、モデルのまなちゃんに見せてあげる方を優先したいとい
う気持ちが強い。だから、彼女に見せる前に公開してしまうことはないのである。
とは、言ってもカメラマンたるもの、自分の作品を発表することも大きな喜びであるから、自由に
公開を許してくれるまなちゃんには感謝している。彼女も、反響を楽しみにしているのは言うまで
もない。

まなちゃんは送った写真について、コメントを書いてくれたりするので、遠く離れていても撮影後
に彼女の意見を聞くことが可能なのである。
また、彼女なりに気に入った写真を自分でPM−700Cでプリントしているようだ。
今日は、評判が良いと聞かされたPLEXTORのCD−Rを買ってきたので、2000枚以上の
デジタル画像をCD−ROMにしてプレゼントしてあげるつもりだが、まなちゃんはこんなにたく
さん写真が残せたことで「これで、思い残すことなく歳をとっていけるよ。ほんとに、宝物をあり
がとー」と言ってくれているが、これも撮り続けていて良かったと思える瞬間である。

これを読んでいるカメラマンで、個人撮影のパートナーがいるのであれば、是非ともネット環境を
持たせてあげることをお勧めする。

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